川をメディアにしたまちづくり | 東京ウェッサイ

今回のゲストは、STUDIO A 建築設計事務所の内山章さん。川をメディアにしたまちづくり「リバサイプロジェクト」についてお話いただきます。

6年前から大田区の多摩川沿いの古いマンションに住んでいます。

大田区というと工場(こうば)のまちというイメージが定着していて、確かにそうなんですが、誰もが知っている通りすっかり産業構造が変わってしまって、80年代に9000あった工場が今では4000を切るまでに少なくなっています。

そうなると当然、そこに勤めてた人の出入りや、近くで住んでいた従業員がいなくなって。または工場そのものが閉鎖されてシャッターが下りているだけでなく、活用されずに放置されていたりして、まちとして活気がどんどん落ちてきている。それでも23区。それも3番目に大きく、区内人口も70万にいますから、それなりに稼働しているように見えるのです。

ただ実際は商店街は元気があるとはとてもいえないし、普段もまち中に人があふれているかいるかといえばそうでもない。気がつけば工場の敷地があっという間に更地になり、細かく分割されてどれも似たような狭小住宅が立ち並んだり、なんとも中途半端なマンションがあっという間に建ってしまったり、首都圏であたりまえのように見られる風景にどんどん変わろうとしています。少なくとも自分が住み始めた6年的比べても明らかに変わってしまっています。変わること自体は何ら問題ないんだけれど、そのかわり方。まちとして果たしてこれでいいのか?という思いがあります。
一方、僕の住んでいる多摩川沿いは休日にはとんでもない数の人が集まってとてもにぎわっている。平日でもみんなそれぞれの時間でそれぞれの過ごし方をしている。それは見ていて本当に気持ちの良い、幸せな景色が見れるわけです。

河原の土手を境にして、このギャップはなんだろう?なんだか居心地が悪いな、というのが、この「リバサイプロジェクト」を思いついたきっかけです。

このプロジェクトは簡単にいうと「川をメディアにしたまちづくり」ということになると思うのですが、普段、人に多摩川のことを聞くとたいてい「BBQで一度行ったことがあるよ」とか「草野球とかよくやっているよね」とか、その程度の答えしか返ってこない。ただ実際にここに住んでみると、この多摩川で日々繰り広げられていることはもっと多様で、この場所特有のコミュニティーがあったり、もっと豊かな使い方をされているわけです。

この渋谷から16分ほどで来れる豊かな自然環境あふれる空間資源の日常と、そこに住みながら自分が考えているこれからのまちのあり方をお話できればと思っています。

内山 章(STUDIO A)

内山 章 Uchiyama Akira
STUDIO A 建築設計事務所

1968年横浜生まれ。STUDIO A 建築設計事務所 代表取締役。建築家。
住宅の設計・リノベーションや商業空間のデザインなどを行いながら、NPO南房総リパブリック理事/被災者への住宅支援「仮り住まいの輪」実行委員/21世紀の住宅の在り方を考える「 hakai2010」シンポジウム・メンバー/ドー研会員など。2007年より川をメディアにしたまちづくりプロジェクト「リバサイ・プロジェクト」主宰。

川をメディアにしたまちづくり http://t.co/QzCbgval

2012/06/29 12:19